ジズリデ小説

『 - e a t a e - 』



















わたしのむかしのはなしをしてあげる





月明かりが柔らかく降り注ぐ静かなヨル。
ジズに寝かしつけられようとしていたリデルが、空気を震わす事無く喋った。




リデルの言動はいつも突発的で、利己的。



そこからは彼女の、幼さを打ち消す気高さを視ることが出来る。

しかしなかなかどうして、コノ少女は、やはり少女なのだ。
ジズの城に住み着くようになってから、リデルがジズに要求した事は計り知れない。





ねぇジズ、
しょくじはわたしがてーぶるについてから、はこんで




ねぇジズ、
ねむるときはべっとまでつれてって、もちろんおひめさまだっこで、よ




ねぇジズ、
ねむれないときは、やさしい、こもりうたを








決して見せない幼さが、日を追うごとに溢れ出る。

ジズはリデルが愛しくて。
愛しくて、堪らない。

そんな彼女がまた一つ、ジズにとってのはちみつより甘い甘味を、零そうとしていた。

「…ソレハ、是非聞かせていただきたいデスネ」




ジズはリデルをベッドに寝かせ、頭を撫で、先を促す。














むかし

どのくらいむかしかはわすれてしまったけど

むかし





わたしはいきていたの





あたりまえね

いまはいきていないけれど

かぞくもいたわ

けしておかねもちじゃなかったけれど

ふつうの、よくあるかてい、だった











でも

あるひをさかいにわたしのここは、からっぽになった

ふつうがどれくらいかはしらないけれど、ふつうよりからっぽになったとおもうわ






そこまで緩やかに言うと、リデルは自分の胸に手を当てた。






よくなかったのよ

いえも、かぞくも、わたしのからだも





よわかったの、わたしのからだ





わたしがいきるためには、おかねがひつようだった

はじめはかぞくも、やさしいことばをくれたわ





あなたはびょうきをなおすことだけかんがえていればいいのよ

きにしないで、がんばって!びょうきにまけちゃだめよ






うれしかったわ





そして、がんばったのわたし

そのかいあって

よくはならなかったけど、わるくなることはなくなったの

いえのこと、いままでのおんがえしをこめてたくさんやったわ





そしたらあるひ

おかあさまのおきにいりの…えざらをわってしまったの

わたし、ゆるしてもらおうなんておもわなかった

だって取り返しがつかないことをしてしまったんですもの





さいごに

そのときおかあさまはこういったわ











「この役立たず…!!!あんたにいくらかかってると思ってるんだい!?」

「多額の費用だして生かしたんだから、少しは役に立ったらどうなんだい!!!」















そしてわたし、そのときこうおもってしまったの

わたしがいきているとおかねがかかってしまう










ジズは居たたまれなくなり、ベッドに横たわるリデルを無理やり起こし、強く抱きしめた。

ジズの肩越しで、リデルは語り続ける。




















いきるのをやめるのはかんたんだわ



くるまがうごかなくなるほうほう、あなたはいくつあげられる?

こわれたら、うごかなくなるわよね

ぶひんがかけてもだめだわ

あと…ねんりょうをいれないと、だめよね







ジズはリデルを抱いたまま、リデルの空気を振動させない喋りに耳を傾け続ける。

彼女の肩は細い。
彼女の腕は細い。
彼女の脚は細い。

彼女は。










やめたの、わたし、たべることを

おかね、かからないわ





そしてわたしはこうなった

あなたにあった








「リデル、サン…」







しあわせなのわたし

いまとっても












そういってリデルは、ジズの腕を優しくほどき、再びベッドの中へと戻った。

ほどかれたままの体制でしばらく固まっていたジズは、やがて聞こえてきたリデルの静かな寝息で我に返る。













コノ少女は。

もう一度きつく抱きしめたい衝動を抑えながら、ジズはリデルの部屋を後にした。















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